2026年は、カワハギ竿の歴史に残る年になりました。シマノが6月に初のメタルソリッド穂先を積んだ「ステファーノ攻 SSS175-MS」を投入し、ダイワは8月、7年ぶりのリニューアルとなる「極鋭カワハギ EX MC」を発売。がまかつはチタン穂先の「エクスシグナル 179SS」で既にこの領域に布陣済み。3大メーカーの「最も柔らかい金属穂先の最高峰」が初めて揃い踏みしたのです。
ところが不思議なことに、この3本を横並びで比較した記事はほとんど見当たりません。当ラボで各社の公表情報を集め、スペック・設計思想・価格・そして「本当に必要か」まで整理しました。
注記:本記事のスペック・価格は2026年8月時点の各社公表情報に基づきます。購入前に必ず最新の公式情報をご確認ください。
なぜ各社は「柔らかい金属穂先」に行き着いたのか
背景にあるのはゼロテンション釣法の完全な主流化です。オモリを底に置き、張らず緩めずで構えるゼロテンでは、穂先に求められる性能が従来と逆転しました。
- 手感度(反響)よりも、穂先が視覚的に変化する「目感度」
- 掛けにいく張りよりも、弱い吸い込みを弾かない「低反発」
- カーボンソリッドでは到達できない細さ・しなやかさ・復元力の両立
これを実現する素材が、チタン系・超弾性合金の金属ソリッド穂先でした。ダイワが「SMT」で先行し、がまかつが「テクノチタントップ」で追随、そして2026年、最後発のシマノが「タフテックメタル」で参戦して役者が揃った——というのが現在地です。
3本の設計思想マップ
結論を先に言うと、この3本は同じジャンルの竿でありながら、目指す方向がはっきり異なります。
スペック比較表
| 項目 | シマノ ステファーノ攻 SSS175-MS |
ダイワ 極鋭カワハギ EX MC |
がまかつ エクスシグナル 179SS |
|---|---|---|---|
| 発売 | 2026年6月 | 2026年8月 | 発売中(現行) |
| 本体価格(税別) | 75,000円 | 89,500円 | 69,000円 |
| 全長 | 1.75m | 1.78m | 1.79m |
| 自重 | 63g | 55g | 78g |
| 先径 | 1.1mm | 0.5mm | 0.6mm |
| オモリ負荷 | 5〜35号 | 3〜35号 | 20〜30号 |
| 穂先素材 | タフテックメタル(超弾性合金・シマノ初) | 極細SMT(形状記憶合金) | テクノチタントップ(チタン合金) |
| 設計の核 | 低反発で「間」を作る食わせ特化 | 先径0.5mmの目感度の極点 | 目感度と操作性のバランス |
数字を見ると面白いことがわかります。シマノは先径1.1mmと「太い」のです。細さで目感度を稼ぐのではなく、素材の低反発性で吸い込みを弾かないことに全振りしている。一方ダイワは0.5mmという異次元の細さで、糸をたるませた状態でも目でアタリが取れる領域を狙う。同じ「柔らかい竿」でも、アプローチが正反対と言っていいほど違います。
各竿の詳細研究
シマノ ステファーノ攻 SSS175-MS:「吸わせの間」を作る竿
シマノ初のメタルソリッド「タフテックメタル」搭載機。コンセプトは明確で、「どうしても口を使わない」「吸い込みが極端に弱い」状況の突破です。
- 極限まで反発力を抑えた超弾性合金が、エサを吸い込む瞬間に穂先ごと「入って」違和感を消す
- 掛けにいく竿ではなく、深く吸い込ませて向こうアワセに持ち込む竿
- 氷点下でも性能が変わらない素材特性で、真冬の低活性戦に強い
いわば「吸わせ系の針」を竿で実現したような1本。厳寒期・激渋・食い渋りへの特効薬です。
ダイワ 極鋭カワハギ EX MC:「目感度」の現在の極点
7年ぶりのフルモデルチェンジ。MC=Micro sensitive Conceptの名の通り、目感度に振り切った設計です。監修は宮澤幸則氏。
- 先径は前作の0.6mm→0.5mmへ細径化。もはや「見えないアタリ」を可視化する計測器に近い
- 穂持ちのパワーは逆に強化され、曲がるのは穂先だけというメリハリ調子。掛け遅れを防ぐ
- 新リールシート「ゼロシート」で5g軽量化、自重55gは3本中最軽量
- ゼロテンはもちろん、たるませ・チョイ宙まで、「穂先を見て釣る」全釣法に対応
「アタリを感じる」から「アタリを見る」への転換を最も推し進めた竿です。
がまかつ エクスシグナル 179SS:バランス型の実力派
がまかつのチタン穂先「テクノチタントップ」搭載機。3本の中では最も早くからこの領域にいた竿です。
- 先径0.6mmのチタンソリッドで、目感度と手元への伝達のバランスが良い
- 179SSは同シリーズ内でもゼロテン特化のセンシティブモデル(ARはオールラウンド、ACは宙・急潮向き)
- 価格は3本中最安の69,000円。ただし自重78gはやや重め
極端に振り切らない設計は「1本で幅広い状況に対応したい」人向き。がまかつらしい堅実な作りです。
価格差の正体
89,500円(ダイワ)と69,000円(がまかつ)の約2万円差は、主に穂先の加工難度と周辺技術の差です。0.5mm径の形状記憶合金を安定量産する技術、AGSガイドやゼロシートといった専用パーツがダイワの価格を押し上げています。「高い=釣れる」ではなく、「高い=特化性能が尖っている」と理解するのが正確です。
で、結局「必要」なのか?——正直な結論
当ラボの結論は、「2本目以降の武器としては最高。1本目には不要」です。
必要な人
- ゼロテン・たるませを既に使いこなし、「見えないアタリがある」ことを体感している中〜上級者
- 厳寒期や激渋日にも船に乗る人(この竿たちの真価は渋い日にこそ出ます)
- 手持ちの張りのある竿(掛け調子)との2本体制を組める人
まだ不要な人
- カワハギ釣り1〜2年目で、まず基本の誘いとアワセを固めたい人→1万円台の入門竿+実釣回数のほうが確実に上達します
- 高活性の数釣りメインの人→柔らかい穂先はむしろ掛け遅れの原因になります
選び方まとめ
| あなたのスタイル | 推奨 |
|---|---|
| 激渋・厳寒期の食わせ特化の切り札が欲しい | シマノ SSS175-MS |
| 目感度を極めたい・最軽量がいい・予算は問わない | ダイワ 極鋭 EX MC |
| 金属穂先を試したい・1本で幅広く・予算重視 | がまかつ 179SS |
2026年、3社の「最も柔らかい竿」が出揃ったことで、カワハギ竿は「掛けの時代」から「食わせと目感度の時代」へ完全に移行しました。ただし道具は思想です。自分の釣りがどちらを向いているかを見極めてから、財布の紐を緩めてください。
参考情報(2026年8月時点):シマノ・ダイワ・がまかつ各社公式製品情報、釣りビジョン・釣りソク等の新製品情報を基に当ラボが整理。価格はメーカー希望本体価格(税別)です。